カワイ製作所に、新兵器がやってきました。
そうです! 京都が生んだリーサルウエポン、44G(ヨンヨンジー)のヨシタクさんが、カワイ製作所に電撃入社!、ではありません。って、じゃあ、なぜココに? の説明はのちほど。
新兵器はこっち!
摩訶不思議な装置です。説明では「静的試験」をシートレールのある部分に実施できるものだそうです。
なんだろう、使い方がまったくわかんない… でもこのアヒルおまる形状の物体、よくみりゃでっかいアルミの塊を削りだしたものです。やばいぞ、これだけでも新車の軽自動車やコンパクトカーが余裕で買えるかも…
「なかなかええ線ついてんなあ」
と川居相談役。
「これも結構するぞ」
こんなもんあるのか。じゃあ、装置一式、一体いくらに… 聞くのはやめておこう。下手に聞いたら、商品値上げするっていわれそう(笑)。さて、今日は何をしているかというと、44Gヨシタクさんと同行巡りなんです。
ヨシタクさんは、正直、モノづくりが主体の当社から見てもオリジナルパーツを良くそろえておられるなあと、関心させられています。しかし、さすがに一部商品に関しては作りたくても不可能なものがあり、それはその専門家に頼むべきとなり、いくつかの製造工場を廻ることになったのです。努力家だなあ。
ヨシタクさんが紹介されたのは、カワイ製作所のシートレールの車検対応の書類。サーキット用だから車検なんてどうでもいい、なんて時代ではないとヨシタクさんも力説していました。
カワイレールは、レカロシートとセットして、筑波の破壊試験を受けており、陸自との打ち合わせで十分な強度がでていることを認定済み。また、S660についても、S660の純正シートとの組み合わせでも試験済み。ヨシタクさんも安心するだけでなく、その取り組みに関心していました。
川居相談役いわく、
「車検に通るから、たくさん売れるだろう、ということではないんです。車検に対応していない=強度不足、と思われるのは、専門工場としては受け入れがたいことですから。創業当時から強度、安全には利益度外視で取り組んできましたから、それを証明したいという思いでやっています」
「今回、また新たに追加で証明する項目が増えたんですが、これらも対応中です。また、先ほどお見せした試験機は、その一環です。」
ヨシタクさんも、今後、シートレールを含めて44GとしてのOEM製品などの打ち合わせを熱心にしていました。終了後、せっかくなので、見学しましょうということで、ヨシタクさんが「オオ~っッ」とうなったのはこいつ。
購入費用もさることながら、維持、メンテ費用を考えればレーザー加工は外注に出したほうが安く済みます。それでも購入された理由は、カワイ製作所の方針として、MADE IN JAPANではなく、MADE IN KAWAIを目指しているからです。社内ですべてを一括生産することで、少量多品種で受注生産の納期と品質をコントロールをするためだそうです。
その副産物がコレ。金型、ジグの山。本来、新しい車種が増えていけば、古いクルマのジグ、つまり金型はどんどん捨てていきます。そうしないと場所をとんでもなく占領しますし、管理も大変です。ところが、カワイ製作所では、レカロだけでなく、スパルコ、コブラ、他のメーカーの色んなシートのデータや金型を40年近い量を保持しています。
確認用の試作品も置いてあります。お客さんが自分のクルマのシートレール、一台分を注文すると、膨大なジグからそれを見つけ出し、セットして、一つずつ作るのです。
川居相談役の息子さんが作業中でした。これだけの種類の商品があるので、当然、受注生産です。常にバックオーダー状態ですから、どの部署の社員さんもみんな黙々と作業をしています。
そして、カワイ製作所はシートレールだけでなく、補強パーツと牽引フックもやっています。こちらもすべて、やはりジグが必要…
これらの写真は氷山の一角…(汗)
もし、カワイ製作所が海外から商品を輸入していたら、当然、古いクルマ、マイナー車なんて対応出来ません。もちろん、安全に関わる部分ですから、利益率や効率よりも、強度、品質が重要ですから、ほぼすべての工程を自社でまかなうことで、自信をもって販売できる商品を作っているわけです。これがMADE IN KAWAIシステム。
さて、先日、シルクロードの、NOTE E-POWERを型取りした商品が販売開始したとのことで紹介いただきました。
一番人気はこのタワーバー。パーツが少ない車だからでしょうか、販売開始から相当売れているそうです。そう、NOTE E-POWERはNISMO仕様まであり、電気モーターのみで駆動する車とはいえ、Z33を乗っていた私からすれば、スピードやトルクも十分納得できる性能。なのに、パーツが少ない…
だからでしょうか、カワイ製作所では結構いろんな部品を開発されました。フロアバーに、
底側の補強まで!
もちろん、レカロの車検対応レールも!
そして、NOTE E-POWERを貸し出した当方、シルクロードが、いまだに商品開発進んでいませんので、こちらも頑張らなきゃです。
この日はヨシタクさんと色んな製造工場を廻り、最後に当社の工場、セクションも紹介させていただきました。
当社もMADE IN JAPAN、MADE IN KANSAI、そしてMADE IN NARAにはなりつつあります。
当社は、レール、補強パーツ、牽引フックの3種に特化しているカワイ製作所と異なり、色んな種類の商品をつくっています。ですので、当社の工場は商品の開発、設計、試作までが主な仕事で、量産は協力工場にお願いする割合が非常に多いです。
ですから、置いてある機械類も、いわば試作品設計用、つまりワンオフ製作用が主になっています。
サスペンションアーム、車高調などは社内でも製造可能ですが、FRP製品は型は作れても量産は不得意ですし、ゴムブッシュは近所のゴム工場に依頼しないとムリです。材質が違うものがたくさんありますから、やはり当社には協力工場さまの存在が不可欠。
奈良県内、そして関西圏の協力工場様は、それこそ何十年ものお付き合いがあり、当社の商品特性まで理解してくれています。
だからこそ、少量多品種をしながらの、品質コントロールも可能になります。
海外の部品も内容によっては使うこともあります。一概に海外が悪い、ということではありません。進化も著しく、品質も日進月歩です。でも、少量多品種をやろうとすると、おのずと日本で作らないとコントロールできない部分が多いのです。もちろん当社も、過去、幾度と無く海外製品を仕入れてみたり、実際に販売した経験もあります。
そういった、何十年ものトライ&エラーから、たどり着いた結果が自社でサンプルを作り、その部品を色んな協力工場さまで量産してもらい、セクションに集まった部品を組み立てる、そういうシステムになっています。
少なくとも私たちの業界において、「安けりゃ売れる!」という時代は終わりつつあると感じています。
もちろん、高けりゃいいわけでもありません。目的にかなった品質のものを、適正価格で生産する、そういう方向性で進んでいます。
こんな話を、マル一日、ワキガ臭に満ち溢れた私のクルマで聞かされていたヨシタクさんに、お詫び申し上げます。流石に、長袖カッターシャツにジャケットはやばい季節になりましたね。衣替えしなきゃ。