リアキャンバープレート(スペーサー) for HA36 性能と安全性の両立の挑戦

機能美の塊である戦うクルマ、レースカーの部品を装着したい、という欲求はクルマ好きなら必ずあります。中でも視覚に訴えるカナード、GTウイング、マフラー、ディフューザー、オーバーフェンダー、リップにサイドステップ、はもちろん、低い車高ということそのものも含まれます。

そして、もう一つ、キャンバー角もそれに当てはまります。キャンバー角をつけることがコーナリング性能を上げるということから始まり、今ではカッコ良い車の重要素のひとつです。

シュピーゲルさんのデモカー、HA36もその要素をしっかりと満たしています。カッコイイ。前後ともにキャンバーがついています。特にリアビューでキャンバーは重要。

しっかりついています。約5度だそうです。

最近は、車検制度の変更により、タイヤのゴム部分は片側10mm以内ならはみ出しOK! 「ハミタイOK!」な世の中になるなんて、業界古い人ほど驚き。指定部品で車検OKの片側9mmのワイドフェンダーを装着すれば、原則、完全合法で手続き不要で、純正よりも結構ワイドなクルマを作ることが可能になります。

キャンバーを付ける方法は足廻りの構造により、ピロアッパーやキャンバーボルトで付けられるもの、スペーサー(ワッシャー)で付けられるもの、そして、構造上不可能なものがあります。

当社はピロアッパー式は得意としていますが、軽自動車やミニバンでポピュラーなリアのアクスル形式のものは長年対応してきませんでした。理由は、「危険だから」。けれど、HA36からはあまりの需要の高さに、どうにかできないかといって、コレが開発されました。

http://silkroad-jp.com/portfolio-2/ha36s/footwork_rearcamberkit

草レースやドレスアップ業界では、ユーザー自身のDIYでワッシャーを挟み込んでのキャンバー対応はありましたが、クルマの構造に詳しい人ほど、「怖い」となるようです。キャンバーブームを肌で感じていたクルマの構造を良く分かっていない私からすれば、「売れるなら作ってよ」とずっと営業会議で不満を爆発させていました。

そこで、より安全な方法があるなら良いということで、これが作られたのですが、ナニがポイントかというと、ボルトの締めかたにあります。

「テーパーワッシャー」と呼んでいる特殊な角度がつけられるワッシャーを組み込むことで、本来は斜めに装着されてしまうボルトを、通常に近い状態で締め込むことが出来るようになったのです。これの開発により、安全性がより担保されたという判断で、製造に踏み切ったのです。

これがノーマル。

当社製品で2.5度つきます。そしてここからダウンサスなどで30mmほどローダウンすると、ナチュラルキャンバーと合わせて、約3度つきます。レースではちょうどいいキャンバー量です。

なお、トーの角度も0mmに設定できるようにしてあります。

私のように「売れるものは何でも作ったらいいのに!」という意見と、クルマに詳しい工場との意見とのぶつかり合いから生まれた商品です。安心の日本製、というか奈良県製、でなおかつ定価¥15,800は業界でも相当安い価格です。その上、構造的にも普通のワッシャー方式よりは相当耐久性が上がっています。

商品知識の高いショップ様を中心にご好評いただいており、売れています。次の車種としてはホンダのN-ONEをスタートしています。これは恐らくNシリーズのワゴン、そしてまもなく発売のNバンにもいける可能性があるうえ、N-ONEにはNバンで開発されたマニュアルミッションが搭載される可能性もあり、レースにおいてはキャバースペーサーが必須になるので、期待大!です。ダイハツ用も開発を開始しました。

でも、この商品、製造工程上、かなり設計や部品の製造に手間がかかるものなので、なかなかラインナップは増えにくそうです。「より速く、より安全に」そして私がそこに加えて、「より楽しく、より安く(笑)」なので、製造側のセクションさんも四苦八苦状態。

そこで、ミニバンやコンパクトカーについては、当社がタイヘンお世話になっているミックコーポレーション様のキャンバースペーサーの取り扱いを開始しました。

http://silkroad-jp.com/portfolio-2/footwork/ck-mick

トヨタの人気ミニバン、アルファード、ヴェルファイア、ノア、ヴォクシー、それにコンパクトカーのヴィッツ、アクアなど。日産のノートやセレナなどもあり、非常に便利です。ネット販売をされていますが、ミックさんも非常に安全性を重視されている会社なので、当社も取り扱いすることにいたしました。

 

今回、この商品を作るときに気付いたことがありました。

物事には必ず色んな立場があります。それぞれ立場によってひとつの商品に対しても色んな意見があるのです。

このスペーサーだって、営業マンからすれば、「売れるものだから作って欲しい」

製造側からすれば、「キャンバースペーサーは危険だから作らない」

で、水と油。意見は平行線でした。お互いの主張は相容れません。ずっと、会議で意地の張り合いが続いていました。その流れを変えたのは、ショップ様を通じたお客さんの意見。「キャンバースペーサーはドレスアップだけでなく、レースでもどうしても必要。装着せざるを得ないんです。でも、今よりほんの少しでもいいから、安全性が高くなるなら、とてもありがたい」。

この意見のおかげで、「いきなり完璧なものを求めているわけではない。値段が他社製品よりも高くなっても良い、現状を少しでも前進させてくれるなら嬉しいんだ」、とういう意見がでたことを受けて、現場の工場も動いてくれたのです。

私はマンガ好きなので、「食戟のソーマ 28巻」を思い出しました。フランス料理の技法で、モンテ・オ・ブールという技法が紹介されていたのです。水と油をまさに融合させる技法。この不可能を可能する技法で、美味いものが出来たシーンにメチャ興奮しました。

http://www.shonenjump.com/j/rensai/soma.html

当社の商品開発会議において、ショップ様、お客様の意見こそがその触媒や技法にあたります。ありがたいことです。

それにしても、食激のソーマ、超オモシロい。グルメ、マンガ好きにはたまらん。漫画家って凄いわ、よくあんなストーリーをどんどん思いつくモンです。私より若い人が漫画家であることが多いのですが、一体どんな濃い人生経験を持っているんだろうと思ってしまいます。主人公のソーマ、リアルに居そうな人物像だからこそ、余計にその人間力の高さを感じます。彼の魅力のほんのかけらでも、50歳目前にして、ちょっとは身につけたいと思わずにはおれません。