R34車高調の減衰力変更 for 3UP Drift Spec

車高調にとって減衰力は非常に重要。

職人でもなく、競技経験も無い、普通の営業マンのワタシは、減衰力は4段より8段、16段より32段、64段より128段と、多ければ高性能だと、駆け出しの頃は単純に考えていました。

ダイヤル段数は、アブソーバーが持つ最大の減衰力を100とし、どれだけ細かく刻むか、ということに過ぎません。ピザを4等分にするのか、10等分にするのか、ということ。本体そのものが持つベース能力とは別。良い脚を作るには、良い減衰力が必要。つまり、大きく、かつ良質なピザを作ろうってこと。

http://www.e-3up.com/

かれこれ9年ほど前に3UPさんからの提案で、2年をかけて、何度も何度もテストをして生み出したRMSの減衰力設定は、ドリフトのトップレースでも使用していただいていますが、サーキットタイムアタックも、普段乗りもこなせる超オールマイティな優れもの。

「そろそろブラッシュアップの時期がきました。タイヤ、クルマ、角度が著しく進化し、トップレベルは800馬力が当たり前。加えて三好選手の腕も格段にレベルアップしたので、そこにあわせてた減衰力設定をするタイミングです!」

「そうか、そんな時期か~」

と開発担当者のマッドI氏。

3UPさんを通じて、小橋選手、三好選手などにご利用いただいている車高調は、まんま当社の量産モデル。ただ、リアショックの減衰力だけは、3UPさん専売で、スペシャルに変更対応していましたが、そのレベルを超えた減衰設定が必要になったということ。

早速スタート。ちなみに、手順は、オーバーホールも、減衰力変更も似たようなものです。

まずはガス室のネジを外し、ガス抜き。

「バキン!」

という凄い破裂音がして、目に見えるくらいのガスが噴出。コレをせずにいきなり分解すると大爆発してホントに危険。興味本位でショックを分解してはいけない所以。

ピストンロッドを抜きます。すでにいくつかの行程をはしょってます。かなり面倒。

(動画撮影したのですが、うまく取り出せず、今回は写真で根気良く紹介します)

抜けました。

オイルを捨てます。エンジンと同様、内部で激しく摩擦していますから、細かい鉄粉などが黒くなってでてきます。三好選手のショックは、予想以上にきれいな廃油でした。ショックアブソーバーの筒の内側をホーニング加工している効果でしょう。内径を精度を上げる技術で、非常に高額。

これをしなくてもショックとしては一応使えるのですが、

「あれ?半年くらいでヒョコヒョコする」 「すぐにショックが抜ける」

というのは、ホーニングしてなくて、内側がギチャギチャに傷だらけになって、オイルが抵抗無く移動してしまうので、減衰力が発生しない状態になっていることが多い。とはいえ、正直、ホーニングは費用を考えれば辞めたいくらい(笑)。

さて、今度は抜き取ったピストンロッドの分解。

オイルの通る勢いを抑えると、ショックの動きが固くなります。逆に、通りやすくすると、柔らかくなります。その度合いを決めるのが、これらのシムと呼ばれる板と、ベースバルブの組み合わせ。

ベースバルブの穴を、このようにシムで塞ぎます。けれど、薄いので、たわんだ隙間からオイルが流れ出します。ここの枚数を重ねていくとたわみにくくなって、オイルがユックリ流れるので、ショックとしては減衰力が高くなり、「固く」なります。

色んなサイズや厚みのものを組み合わせることで、オイルの動きを替えていくことが、減衰力特性、車高調の味付けを大きく変えることになります。

打ち合わせ済みの3UPさんの依頼を、シムで再現したカルテ。

変形したものがあれば交換。また、減衰変更する上で、再度サイズチェックなど、画像では伝えきれないくらい、面倒な作業が続きます。

確認終わったら、再度組み立て。ベースバルブやシムを重ねていきます。

オイルを入れて…

組み立てたピストンロッドを入れて…

オイルを入れて…

(はあ、動画編集のほうがラクだ…)

締めこんで、圧入。

ガスを入れて、完成!ちなみにこれ以外にも気の遠くなるくらい、細かい清掃作業、入れ替え作業、組み立て行程があります。

これで終りではなく、今度は減衰力の確認。

機械に一本ずつセットして計測。

おっツ、ワクワクするぞ!結果は…

「あかんヮ。思ったより変わらなかった… 初期がもっと極端になるはずだったのに…」

となると、また最初から、あの行程を繰り返すことに… 吐きそう… (苦笑)

ということで、R34車高調、3UPさんが提案する減衰力で、三好選手のパワーアップに貢献できるよう、当社としてはできるだけご希望に添えるように奮闘中です。

MADE IN JAPAN には拘っていない、かも

この記事でご紹介させていただいたように、量産品の大半は協力会社さまにお願いをしており、ショックアブソーバーも、大量生産は、他の工場に依頼しています。けれど、減衰力変更やオーバーホールは当社工場内で対応。自分たちの理解できていないものは販売したくないから。

量産、試作開発できるレベルの技術と知識をしっかり持った上でのアウトソーシングを、製造責任として心がけています。

ショップ様からの依頼を受けて、車高調開発させていただく機会が大変多い。そして非常に勉強になるのは、特定のクルマで実際に戦っているからこそのデータ。

実践データ + シルクロード = できるだけ購入しやすい価格帯で入手できる高性能パーツ、を目指しています。

 

あ、しばらく行方不明になるので、ブログ更新おくれます。