サスペンションアーム 合法? 違法? 構造変更?

サスペンションアーム、この業界で「アーム」と呼ばれる部品。

元々レースなどでキャンバー、トー、キャスターなどと呼ばれている、タイヤの向きや傾きを変更させるための部品。当社もS30、GC10などの旧車の時代から何十年と製造を続けています。これが旧車用。

http://silkroad-jp.com/portfolio-2/footwork/foot_arm/arm_nissan/arm-gc10

AE86、シルビアなどのレース用ももちろんロングセラー。これはシルビアのリアキャンバーアーム。

http://silkroad-jp.com/portfolio-2/footwork/foot_arm/arm_nissan/arm-s14

サスペンションアームを交換するというのは、ホイル、マフラー、車高調よりもハードルが高いイメージがあります。理由は簡単、基本的に車検 ’非’ 対応の商品だからです。

車検に対応するのか否か、という基準は一体どこにあるのかということ、とても荒っぽくシンプルに説明するなら、「指定部品であるか否か」が分かりやすいです。

http://www.aiseishin.jp/qa/shitei.pdf#search=%27%E6%8C%87%E5%AE%9A%E9%83%A8%E5%93%81%27

この文面の趣旨としては、「自動車の部品を交換(純正以外に)するのは違法、ただし、国が一定の条件の下、一部の部品の交換は許してあげよう」であると、ワタシは理解しています。

対象になっている部位は多種多用ですが、アフターパーツ業界で関わりが深いところだと、バンパー、ルーフキャリア、車高調、マフラー、ホイル、ブレーキ類などが該当します。ここで「指定」対象になった部分の部品は交換しても車検OK、合法なのです。(一定の条件下ではありますが)。

そして、サスペンションアームは、これに該当していません。なので、基本的に非合法となる場合が多いのです。

けれど、救済措置はあります。いわゆる改造車検、構造変更というものです。指定部品ではないパーツの取り付けや改造も、陸運局にてその部品や改造内容を検査官に確認してもらい、問題が無い場合は、「構造変更」、つまり改造された車として認定してもらうことで、合法となります。これが改造車検と呼ばれるものです。これは別にレース車両やドレスアップカーに限らず、キャンピングカーや働くクルマ、仮装車などもこれに当たることが多いのです。

当社は、もともと、アーム類は特に安全性に関わる重要な部品という認識の下、発売時から純正アームとの強度比較試験に取り組んできました。下記は当社のアーム類には必ず添付されている、工業試験場での破壊試験の結果です。

純正と、当社のアーム、両方を破壊し、強度を比較しています。この検査は、車検に関係あるかどうかではなく、当社の商品が安全であることを自分たちが確認するためにはじめました。

とはいえ、いずれにしても構造変更を申請するにはこの書類は必須です。そして、これに加えて、以下のような書類を整えて、陸運局で審査してもらうことになります。

基本的にアームについてはこれらの書類が整っていれば審査に受かることは多く、手馴れたショップさんならこういう申請もお手の物です。

なお、この構造変更の申請は、車検と同時には受けさせてくれません。事前申請といって、この改造部品の判定をしてもらうためだけに陸自に予約をとって、許可をもらうことになり、手間がかかります。しかも、申請すれば100%通るというわけではなく、検査官によって求められる内容も変わることがあり、スキルも必要となります。

ある日、3UPの三上さんからこんな提案をいただきました。

http://www.e-3up.com/

「時代も変わりましたね。10年以上前のドリフトブームのときは、正直こんなクルマが公道を走っていいのか、というヒトたちもいましたが、今はお客さん自身の意識が高く、競技用のクルマでもナンバーが装着されるものは、フル公認を取るヒトが大多数。シルクロードさんのアームには破壊検査の結果が添付されているので、公認はとれます」

はい。

「で、そこで重要なのが構造申請済の書類です。正直、僕も毎回事前申請をするのは大変です。だって、車検一回受けるために、2度手間。時間もガソリン代も代車もヒトも余分にかかり、お客様に負担をお願いせざるを得ない部分も出てきます。なので、シルクロードさんで、陸運局に『事前申請済み』書類の発行ができればいいんじゃないかと思うんです。ショップさんも助かると思いますよ」

なるほど、とはいったものの、実はコレが大変。

事前申請済み、という意味は、先ほどの破壊検査の結果と、商品の強度を証明する説明書類をもって陸運局にいくまでは同じですが、目の前のクルマ一台のOKをもらうのではなく、全国どこの陸運局でも、当社のアームであれば自動的にOKにしてもらうということです。当然、審査は桁違いに厳しくなります。

けれど、クリアできれば、オンラインで全国の陸運局に「シルクロードが発行する事前申請済み書類が添付された商品は、自動的に構造変更OK」と奈良の陸自から全国の陸自に通知してもらえるのです。

http://silkroad-jp.com/portfolio-2/footwork/foot_arm

この¥3000で発行する書類があれば事前申請が不要になるのです。本来であれば、マル一日、1人の人間の時間を拘束してしまう手続きが、不要になるのはショップさま、そしてお客様の負担軽減に貢献できます。

なお、当社に車検証を送っていただき、その車検に対応した書類になるので、コピーしたものは使いまわし出来ません。原本のみ有効。また、陸運からお達しで、購入年月日、車検証の詳細、すべてを長期に控えておく義務を当社は担っています。

審査が厳しくなる理由は、奈良県の陸自の担当者も、該当する商品をOKを出した責任が全国に発生するからであり、至極当然。純正よりちょっと強度がある程度ではOKしてもらえません。数値は明かせませんが、相当な強度を求められます。大変ではあるし、面倒ではあるけれど、同時に陸自に当社の商品を鍛えてもらっていると思えば、とてもありがたいことです。

なお、アームはすべてが対象ではないのです。ルールは結構頻繁に少しずつ変更されており、例えば、日産のハイキャスを殺す、ハイキャスキャンセラーは、以前は構造変更の対象だったのに、現在は交換しても普通に合法となりました。理由はわかりませんが、憶測だと、古くなってこういう部分の修理が難しいということなのか、もしくはハイキャスという構造が走行安全上必要ではないと判断されたのか、何かあったのでしょうね。

http://silkroad-jp.com/portfolio-2/footwork/foot_arm/arm_nissan/arm-s13

なお、当社のS13用はオイルリターンパイプが付属しており、美しくキャンセルすることが可能。

AE86では2~30mmの延長ロアアームが人気ですが、実はそのままでは非合法となる可能性が高い。というのも、純正を溶接した場合は、溶接強度の証明を求められるからです。溶接強度を証明するために、装着しているアームを破壊するなんて本末転倒。じゃあ、とうするのかというと、聞いたところでは、溶接したヒトの技術レベルの確認を求められたこともあるとか。溶接の免許などでしょうかね。

当社の調整式なら、こちらも破壊試験済みなので問題なし。構造変更書類も発行可能です! 便利。

カーメイクラスティさんからは、こんな意外な商品の提案もいただきました。

http://www.rasty.tv/

「FT86の純正ロアアーム、一般道で普通走行する分には問題ないんですが、サーキットで縁石にひかっけちゃったりすると、結構曲がっちゃうんですよね。補強プレートつくったらどうですか?」

http://silkroad-jp.com/portfolio-2/footwork/foot_arm/arm_toyota/arm-zn6

これは、純正本体を一切加工することなく、本体のプレートを追加しているので、原則車検はお咎めなし。

この可変式のロアアームもRASTYさんに提案していただきました。もちろん構造変更対応書類は発行可能。

テンションロッドはどういうわけか、当社の調べた結果では、現時点では構造変更対応書類は不要で、普通に車検通ることが多いそうです。教えてはもらえませんが、どうやら陸運局の認識では、力がかなりかかるアームについてこういった強度証明を求めているのではないかと思われます。さほど強度が必要の無い部分については、こういった申請を求めないこともあります。

一時期、構造変更を要求されるアームは、純正の名称に左右されているのではないかと、当社では推測したことがありました。「〇〇アーム」と、アームという文字が入った部分は自動車メーカーが力のかかる部分と認識してイルっぽいからです。でも、自動車メーカーもいい加減なもので、FT86とBRZ、兄弟車で同じアームなのに、片方がロアアームなのに、もう一方はロアリンクと、名称が変わっているものがあり、名前だけでは判断もできず、当社では都度、検査官と書類が必要かどうかを協議させていただいております。

ということで、当社としては、破壊検査は基本全部のアーム類に対して行い、純正以上の強度を求めることはもちろん、できる限りすべてのアームを陸運局で確認してもらって、より安全なものになるよう努力し続けております。 

ただ、上記全てに言えることですが、各陸運局の検査官の解釈がありますので、いかなるアフターパーツにも、100%オッケーといえるものはありません。また、法令自身が、どんどん変わっていきます。

だからこそ、当社としても、変化するルールにも注意をおこたらず、何よりも法令を遵守することと同じくらい、より高い安全性を追求しています。

こんな感じで、アーム類の開発では色んな手間がかかってしまい、できるだけ頑張ってはいるものの、価格面では魅力が乏しいものもあると思います。ネット検索すれば、どうしても価格に目が行くのは私だって同じ。安いものが欲しい!というのは、人情。でも、モットーとして「より速く、より安全に」を掲げている以上、こういった部分は妥協せず、歯を食いしばってとりくんでおります!