「アウトソーシング化に力を入れる」
販売会社であるシルクロードと、製造工場のセクションの代表がそう宣言したのは十数年前のことでした。恥かしながら、その意味と重要性に気付いたのは最近のこと… 真空成型工場さまとの提携がきっかけでした。
HA36アルトワークスが発売されると、6.5Jのホイルがはみ出して困る、そんな相談をショップ様に受けました。たった数ミリとはいえサーキットでもレギュレーションによってはNG。一般道では当然アウト。じゃあ、FRPのオーバーフェンダーを作ろうとなったのです。当社にはFRPの試作品を作る設備があります。
当社では機能パーツとしてFRPでアンダーディフューザーを作っていますが、気温や職人さんの個々の技術によって、精度がばらついてしまう。FRPがハンドメイドである宿命。また、大量生産には向かないため、納期でもご迷惑をかけることが多い。
当社の汎用カナードのように、加工取付なら問題はありませんが、オーバーフェンダーは精度が必要。特にボディの凹凸が激しいプレスラインを持つアルトワークス。また、FPRだと歪みをごまかすために、ボディとの間にゴムモールを入れることになり、継続車検対応の片側9mmに押さえるのが難しい。
相談にのってくださったのが、提携先の真空成型工場様でした。完成したときの感動は忘れません。
純正バンパーと同じ材質と質感による一体感。
複雑な凹凸の純正のプレスラインをきれいに隠すことで得られるワイドボディ感。
基本、塗装不要、取付両面テープのため、装着コストと時間の大幅短縮。
薄く作れるおかげで、継続車検対応の9mm幅に押さえられること。
そして、同じコンセプトの第2弾として発売を控えているのが新型ジムニー。真空成型と出会わなければ、FRPでアルトワークスのフェンダーを生産していたら、これも生まれてこなかったでしょう。
真空成型製品はフェンダーだけにとどまらず、現在、S660用のスマホホルダー、ドリンクホルダーがまもなく開発終了予定。これらの内装品も、他車種への展開を予定しています。
アルトワークス用リアウイングも、両面テープで純正に被せるだけで、面積をアップさせることが可能です。
当社には無い製造能力を外部にお願いすること、これこそアウトソーシングの真髄。物流が便利になった現代、ネット上で打ち合わせをして、世界中から安い商品を引っ張ってきて販売することが簡単になりました。それもアウトソーシングだし、大切なのですが、やはり、当社は製造工場さまと直接お会いして、互いに気持ちを理解して、丁寧に商品を創ることが本来だと感じています。
今回のジムニーのフェンダーも、予想よりも販売まで時間がかかってしまっています。けれど、それは工場の職人さまが、できるだけ妥協せず、ユーザー様に価格以上に満足して欲しい、そんな願いをこめて製品製造の型修正に精魂詰めてくれているからでした。素晴らしい技術とプロ意識をもった提携先との出会いには感謝しかありません。
さて!当社の工場部門であるセクションにも様々な工作機器や道具、そして技術をもった人たちがいます。
ショックアブソーバーも基本内製です。でも特殊なサイズはKYB様でOEM生産してもらっていますし、ショックアブソーバーの量産品は外部組み立てを依頼しています。自社で出来るけれど、そうなると巨大設備や多くの人材の確保が必要になります。それを外部に委託することで、当社はそのコストや労力を減衰力変更やオーバーホール、特注車高調、そして新商品の開発に力を入れることが出来ます。
特殊なピロアッパーや車高調の部品はアルミで一品ずつ社内で削りだしています。さすがに一品ずつ作るものは外部委託してても断れるか、高額になってしまいますし、特殊なものが作れません。どの部品を外部にお願いするか、どの部品を自社生産するかを使い分けすることが重要になっています。
もっとも重要視しているのは、自社で試作品を作れること。試作品を生み出す設備があれば、一つ一つの部品は県内を中心とした何十年とお付き合いのある提携工場さまが部品を量産してくれますから、当社で最終組み立てることで品質管理も出来ます。
大量生産で安く販売することは決して悪いことではありません。素晴らしい手法です。けれど、クルマ業界、特にその中でもカスタムやチューニングという非常にマイナーな世界では、特に近年、ユーザー様のレベルが高く、ただ安いものよりも、品質を好む傾向が高まっています。そして対応すべき車種も商品も増えている。つまり、少量多品種が求められているということをいち早く察知したからこその、アウトソーシング化宣言だったと気づきました。
当社の代名詞的な商品の一つ、エンジントルクダンパー。海外のコピー品に一度は駆逐されそうになりました。けれど、日本製でこつこつ、車種を増やして対応していった結果。生き残れました。海外製品は大量に売れるシルビアは作れても、カプチーノやAE86といったマイナー希少車には対応できません。少量多品種こそ、当社の目指すところ。
こちらは、44G様が先行発売をしているS660用エンジントルクダンパー。
今週の東京オートサロンでの展示販売用。44Gさんのリクエストに応じて、色のバリエーションが多い。製造関係の方はご存知だと思いますが、近年アルマイトは高額になっただけでなく、色のバリエーションは難しく、大量にお願いしないと受けてもらえないこともあります。これを小ロットで価格の幅を押さえているのも、協力社様のおかげ。
重要なアウトソーシング提携先、というか、もう腐れ縁(笑)。今年、創立40周年を迎えられたカワイ制作所さま。お付き合いもモチロン40年。
シートレール、補強パーツ、牽引フックのスペシャリスト。当社も一時期、これらの商品を製造しようとしたことがあります。結果的にムリ…
さすまじい量のシートレールのジグ… 一つの車種に左右で2脚。そして、ハコスカの時代からの設定をもっているわけですから、当然1,000を超えて当たり前。
これを保持する場所だけでも恐ろしいし、管理するのも想像を絶します。
これ以外にも当然牽引フックや補強バーのジグがトンでもない量で存在するわけです。そしてお客様の注文に一つずつ対応するのです。ムリ。当社ではどうやってもムリです。特注にも対応してもらっており、まさにアウトソーシング先。
「40周年の記念ボールペンつくってん、もって帰りや~」
ありがたいことです。販売してくださるショップ様、購入してくださるユーザー様、そしてこうやって当社が創りたい商品を生み出すための技術サポートや生産を協力してくださるところも、同じくらい重要です。
「お客様は神さま」という言葉が現代は誤解されて伝わっているとテレビで拝見しました。私もそう思います。ユーザー様、販売社様、そして製造側の3者が互いにリスペクトしあう、同じ立場が本来だと思うのです。
賛否あるでしょうけれど、ワタシはこの人の手法は好きではありません。宣伝効果を狙った手法だといわれたら、そうでしょうね、としか反論できませんが、お金の使い方に疑問をもってしまいます。1億円がまるで紙切れのように、10億、100億とテレビで派手な散財ぶりを紹介しているのですが、それを、ZOZOへの商品納入メーカーはどんな気持ちでみてるのか気になっています。
悩んで新商品やデザインを考え、何度もダメだしをされ、コストを切り詰め、リスクを飲んでわが子のように送り出した商品。それを作った人の気持ちがわかれば、せめてお金をばらまく姿はもう少し抑えるのでは…
また、もらったヒトは嬉しいかもしれませんが、「おい、100万やるよ、喜べ!」といわれて、現金をお客様に投げつけるのも、お客様へのリスペクトを感じません。むしろそんな利益あるなら、送料無料にしてよ、と一般ユーザーは思うでしょうし、普段、一体どれだけ利益をとっていたんだろう、と懐疑的になると思うのです。
ええ、そうです、そうなんですよ、貧乏人のヒガミっす(苦笑) 100万くれたら手のひら返します!
なんだかんだいって、話題をさらう時代の寵児。でも、少なくともワタシは商品を丁寧に売りたいし、一緒に作ってくれた工場様や職人様と、お客様が満足してくれた喜びを分かち合いたいと思うのです。
人間は、お金だけのために働いていません。自分が社会のどこかで役立っている、そういう充足感を求めているんだ、ということを学生時代に社会心理学で学んだことをZOZOさんを見て思い出しました。
心機一転!今年も、色んな方々にお世話になりながら、新商品開発に取り組んでまいります!
さて、早速、今からオートサロン出展用の商品の配達にいってきま~す。今年もやっぱり貧乏暇なしイボ痔ありの営業マンのまま、年末を迎えそうです…