DA16スーパーキャリー 純正ショックを流用するサスペンションキット

隣のセクション(工場)を覗くと、アレっッ!?みやびオート様からお借りしているスーパーキャリーが再入庫。

先日、ローダウン、リフトアップ共にキットが完成していたはず。

このダウンで、十分カッコよかったのに、なぜ?

「直巻スプリングの長さとレートの調整や。この間のはダウン量ばっちりだったけど、底付き感がするんや。別途バンプラバーも準備中だけど、少しでも乗り心地を良くした上で、ダウンさせたいからな」

これ、車高調に見えますが、純正ショック(ストラット)のお皿をハンマーで叩いて取り外し、ボルトオンのキットと直巻きを被せただけの、純正流用の車高調キット。

全長調整ではありません。スプリングの遊び対策に、ヘルパースプリングを入れてあります。純正ショックと純正マウントをそのまま使い、バネだけ直巻きに交換するというイメージ。

見た目にちょっと野暮ったいこの純正ストラットが…

じゃじゃ~ん!大へんし~ん!カッコイイ!そして純正ストラットベースだからこその安心オーラが凄まじい。

ちょっと古いハイゼット用の動画ですが、車高調キット化の方法です。

ついでにリアのリーフスプリングの交換動画も。

はずしたら…

簡単装着。

ダウンサスはお手軽で安いというメリットがありますが、バネだけで車高を下げるとなると、バネを柔らかくするしかありません。となると、下げるほどに底付きリスクがありますし、柔らかくするということは、コーナリングなどの走行性能は下がる方向になります。

もう一方、現在、主流となっている全長調整式は、荒っぽく言えばバネの長さや固さに依存せず、車高を調整できるので(厳密には違いますが)、最善。ただし調整できる部分がたくさんあるため、セッティングを出すのは腕次第ですし、長期間の耐久性は、可動範囲が多いため、純正よりは劣ってしまいます。

その中間を狙ったのがこの純正流用タイプ。

もちろん、レースやイベントとなると、ダウンサスや純正流用キットでは性能面では敵いません。全長調整式が必須。

ただ、過去20年のミニバンブーム時に、そういった特性の理解の浸透よりも先に、猫も杓子も全長調整式!となってしまい、ミニバンも軽自動車もレースカーもこぞって装着したため、近年では「車高調はすぐに壊れる」「異音が酷い」なんてイメージも一部には発生してしまいました。

それは誤解だと思うのです。ダウンサス、純正加工タイプ、純正置き換えタイプ、全長固定式、全長調整式、それぞれがメリット、デメリットを持っています。そして複雑な機構になればなるほど、その良し悪しはセッティングする側の知識や経験に大きく左右されます。乗り心地が悪い、なんていうのもセッティングの誤解が多いと思うのです。また、耐久性なども事前に構造を理解していれば対応は可能です。

今回の純正流用ダウンキットやスペーサー式のリフトアップキットのアイデア自体は新しいものではなく、当社が昔販売していたサスペンションキットのリバイバルなんです。時代はめぐるんですねぇ~

3~40年前は純正加工や流用が主流だったんです。

この時代、当社のショックアブソーバーの大半はKYB様か、TOKICO様で製造していただいておりました。いい時代でした。ワタシが入社した20年ほど前は全長調整式のブーム直前。まだまだこの方式が主流でした。

TOKICO様、KYB様には随分とお世話になりました。今もKYB様からは一部製造をしていただいております。TOKICO様は会社が吸収合併され、現在は別分野。懐かしい。

この数年、サスペンションに対する需要は二極化していると感じています。

車中泊、キャンピング、レジャーが急速に人気になりました。魅せるための車、速く走るための車、ではなく、「実用車」としての需要が高まっています。となると、重視されるのは実用性と耐久性。目的地に向かう途中でのトラブルは論外。乗り心地が悪いのもご法度。一般公道を走るわけですから、違法性の高いものも避けたい。

そういったことを重視し、今回のスーパーキャリーを初め、各種リフトアップやローダウンは、車検対応の範囲内で、耐久性が高く、同乗者の快適性を重視しています。だから純正流用となるわけです。もちろんその範囲内で、できるだけファッション性、走行性能も高める努力をしております。

もう一方は、過去から人気である本格的なサーキットやレース、イベント用のサスペンション。参加するヒトたちは、更なる高機能、高性能を求めておられる傾向が強いのです。

「安くてそこそこな適当なやつでいいよ」

なんていう時代は終わりました。本気で、という人たちが圧倒的で、求められるものもハイレベル。

当社では3UPさんに鍛えていただいたドリフトを主眼に置いたスペシャルモデルを発売し、大変好評をいただいております。軽自動車のレース用車高調も同様に専門店さまに監修いただきました。サーキットに行くなら、しっかり結果の出せるものが欲しい。ドレスアップコンテストなら、勝つための究極に下がるものが欲しい、そんなユーザー様が増加しており、当社はそちらへの対応も強化しています。

だから、当社では100車種は超えていた車高調ラインナップを廃止し、本当に結果を出せる、自信のあるものだけ数車種の販売に踏み切りました。

大切な事は、それぞれの車と使い方にあったパーツの製造。

とはいえ、当初は、この古い手法、純正流用車高調やスペーサー式リフトアップキットは、皆様にご理解いただけないかもしれない。売れないかもしれない。そんな危機感がありました。世間一般に売れているものを売るのが商売上ベストだ、という気持ちもありました。けれど、実際に販売してみると、少しずつご理解いただき、ご購入していただけるようになり、本当に嬉しく思っております。

さ~て、まだまだネタ満載です。ハイゼットカーゴに、ジムニー、N-VAN、スペーシアギア、ND5RCロードスターに、124スパイダーも開発対象になっています。

貧乏暇なしの営業の旅も続きます。