ND5RC ロードスター用ロングマニ by イーカスタム(eee custom)

いよいよ完成目前! 新型ロードスター用マニフォールド by イーカスタムさん。

http://www.eeecustom.co.jp/86/shop.htm

ND5RCは純正が良く出来ており、マフラーやマニ、エアインテークなどの吸排気を適当に交換してもパワーアップしてくれないという情報が多いクルマです。これはロードスターに限らず、最近のスポーツカー、特にNA系はその傾向が著しくなっています。コンピューター制御の進化も大きいですし、燃費向上のための燃焼効率向上の影響なども大きいと思われます。

イーカスタムに到着するとちょうど装着テストの真っ最中で、驚かされたのは音! これ、絶対マニだけじゃなく、マフラーも替わっていると思っていました。

甲高いエキゾースト音が、数百メートル先の堤防付近までいってもはっきりと聞こえます。スマホ撮影の音よりも現車はもっと音が大きい感じです。といっても、マフラーを替えたような音量、音質ではなく、基本静かだけれど、エンジンを回すと、エンジンルームから心地よい音が少し大きめに聴こえてくるような感じです。大人のサウンド。

鶴和社長の前に試乗を済ませていたメカニックの岡田さんも、

「パワーも実際に上がっているでしょうけれど、サウンドマジックっていうんですかね、音量と音質のせいでさらにパワーアップを感じてしまっているように思います」

というほど。マフラー、ドノーマルでこの音はいい! マニ側で音を調律するのは今後ありかもしれない!

試乗を終えた鶴和社長はオートマモードで流したら、全体的にトルクとパワーアップが体感できたとのこと。先ほどの岡田さんはマニュアルモードで走行したら低速トルクはあまり変わっていないけれど、高回転側はあきらかに上がったとのこと。

二人とも同じことをいったのは、

「乗りなれたこのクルマでいつもどおりの感覚でコーナー手前まで加速していたら、予想より速度がでていて、ブレーキが遅れてしまう」というほど、パワーは上がっていたとのことでした。

今後は、マニュアル車両でのテストと、シャシ台での数字上の確認を行うとのことでしたが、鶴和社長はFT86のときもそうであったように、数字よりも体感で上がっていることが最も重要だとのことでした。

今回のマニの開発手法は業界では聞いたことの無い、新しい手法です。

最初の試作品を作ったときの画像です。下の怪しいジャバラのマニ、これはまんま、洗濯機のジャバラホースです。純正のフランジに4本のまったく同じ長さのジャバラホースをくっつけて、その中に発砲ウレタンを流し込み、硬化するまでの時間を利用して、何十通りというレイアウトを試し、一番よいデザインになったら硬化を待つというものです。

でも、いうほど簡単じゃあありません。まずベースを作るもの面倒だし、何より発砲ウレタンの量は勘に頼るので、溢れてきてエンジンルームがぐちゃぐちゃになります。理想的な形状になったといっても、今度ははずそうとしてもスペースの形状との相違で抜き出せなかったり。また、この準備にも一ヶ月くらいかかったそうです。いざ、出来上がったものをいざステンレスやスチールで再現しようと思っても、なめらかなアールが出せないなど、タイヘンなことはたくさんあったようです。

今回この手法に踏み切ったのは、ロードスターの老舗のタックイン99さんにマニフォールドについて色々と勉強さえていただきにお伺いしたときに、「新型は簡単にはパワーがでないよ」といわれたことだそうです。完全な等長を目指し、ロングにすることで、NAが苦手とする立ち上がりのトルクダウンを防ぐために、この手法にたどり着いたようです。

「熟練の職人による」的なものは確かに存在するとは思います。けれど、確実に等長にするなら、最初から同じ長さのパイプを曲げることが一番確実で論理的。でも、ステンやスチールを4本用意して、グニャグニャ曲げて等長のレイアウトにするのは、不可能に近い。その答えがじゃばらでの試作品。言われてみれば「あ~」ですが、実践した人はほぼいないでしょう。

これは、先ほどテストしたロングのパイプが一回り太いタイプ。そうなんです、同じ形状でも、ノーマルエンジンのヒト向けと、パワーアップ車両用にと、2種類用意しているんです。これもテスト待ち。

ということで、こちらが純正置き換えタイプ。良く見るとフランジに純正遮熱板とりつけのためのステーがあります。純正にこだわるお客様用にと作っており、なんとこちらも太さが2種類。つまり4種類のマニを作っているんです。

「違うで、厳密には8種類の予定や。だって、ステンレスとスチールの材質違いも作るから」

そうだった、現在発売中のFT86やサニトラもスチールとステンがある。

「そのうち、チタンも追加するかも」

………うそでしょ………

何事も手をぬかないヒトなのですが、「ぞっ」としたのはこの2種類を見たとき。火が入って色が変わっているのは前回テストしたもの。今回、これからテストする新品と比べると、レイアウトが変わっている… ぱっと見同じに見えて、真ん中の下のほうのパイプがクロスに変わってる! しかも真ん中の2本は立ち上げ角度も変わってる…

コレをつくり直すだけでもタイヘンのはず… 執念を感じます。

それにしてもカッコイイ! ロングマニはトルクが出やすくなる特徴があるといわれていますが、見た目のインパクトも凄いし、音質がマフラーノーマルのままでも随分変わる印象があります。

当社もSR20用のロングタイプを3UPさんの監督のもと開発させていただきましたが、かなり好評価をいただいております。

3UP SR20ロングエキマニ はじめました。 え? 在庫なくなりました?…

そして、当社もイーカスタムさんに負けているわけには行きません。当社だって新マニ開発中なんです! とはいっても、自社努力ではなく、これまた3UPさんからの提案ですが…

現在販売中の従来品とまったく同じにみえますが…

よく見ると、タービンの向きが…

提案主でもある3UP三上さんが、まもなくテストするプロトタイプです。

私がこの業界に入社した20年近く前は、ネコも杓子もみんなターボ、大排気量で、パワー競争の時代。マニもタービンも豊富な種類が大小さまざまなメーカーから発売されていて、買う側はどれを選ぶか楽しかった時代でした。今は、マフラーすら交換しない時代になり、今回の新型ロードスターにいたっては、マニフォールドは大手有名メーカーからの発売はゼロ。ショップさんのオリジナル品のみ。

これじゃ寂しすぎです。シルビアやAE86が名車の地位にあるのも、当時、みんながたくさんのパーツを開発したことで、お客様がカスタマイズやチューニングする選択肢が広くなったから。チューニング、カスタムパーツがほとんど無いクルマでは、お客様も購入後の楽しみがなくなってしまいます。

シルクロードという会社は40年前、お金も無い貧乏なくせに、当時花形だったラリーやダートラにあこがれた当社の社長や部長がその他大勢の人たちが作り上げてきた会社です。トッププロが使うような高級、高額なパーツも良いですが、クルマに興味を持ったばかりの若いヒトも、何とかやりくりできる値段で楽しめる部品が必要ということは良く分かっている会社です。

こんな時代だからこそ、エキゾーストマニフォールドなんていうマニアックパーツにも、良いものを、できるだけ良い価格で発売できるよう、どんどん挑戦してきますよ!